2008年12月07日

第5回教養講座:宇宙滞在時の心理的ストレスとその対策(要旨)

●第5回教養講座
日時:2008年10月18日(土)

話題の職場紹介 宇宙飛行士の健康管理
井上夏彦(宇宙航空研究開発機構 JAXA)

1. 宇宙飛行士の心理的健康管理とは
これまで、何人もの日本人飛行士がスペースシャトルに乗って宇宙に飛び立ちました。彼らの宇宙滞在期間は約2週間。これはスペースシャトルの飛行可能時間によって制限されています。これに対し、日本/アメリカ/ロシア/ヨーロッパ/カナダが協力して建築中の国際宇宙ステーション(ISS:http://iss.jaxa.jp/)ミッションでは、一回当たりの滞在期間が3〜6ヶ月と、非常に延長されています。
 2週間程度ですと、ストレスが高くても「気合い」でなんとか持たせることが可能ですが、このくらいの長期間になりますときちんとストレスを低減するようにしなければ、最悪の場合ミッションの成否に関わるまでに至ってしまうかもしれません。そのため、国際宇宙ステーションミッションにおいては、これまでの身体的な健康管理に加え、心理的な健康管理が重要とされています。
 そのために、JAXAをはじめとする宇宙機関では大きく分けて以下の3段階の心理的健康管理を行っています。
・ 優れた心理的資質を備えた宇宙飛行士の選抜
・ 飛行前の心理的訓練の実施
・ 飛行中の様々な心理的支援

2. 宇宙飛行士の選抜
 それでは宇宙飛行士として優れた心理的資質とはどんなものでしょうか?
 これまでに、各宇宙機関の宇宙飛行士・訓練担当者・心理支援担当者が集まって定めた、ISS宇宙飛行士が備えておくべき心理的資質として、以下の8項目が抽出されています。
@ Selfcare Self Management
A Communication
B Cross Cultural
C Teamwork and Group Living
D Leadership and Followership
E Conflict Management
F Situational Awareness
G Decision Making and Problem Solving
 いままさに、JAXAでも新しい宇宙飛行士候補者を選抜中ですが、健康であることや専門的能力に加え、これらの資質を評価して絞り込みを行っているところです。

3. 宇宙飛行士の心理的訓練
 このように選ばれた宇宙飛行士に対しては、平均的に飛行まで5年かそれ以上に及ぶ訓練が行われます。一般的には、1.5年程度の宇宙飛行士としての基本的な知識を学習するための「基礎訓練」、続いて2年程度のシャトルやISSの詳しい仕組みを学習するための「維持向上訓練」、最後に2年程度の実際のミッションで行う作業などを学習する「ミッション固有訓練」に分けられています。
この期間中にはもちろん心理的な訓練も含まれています。基礎訓練では座学を中心とした訓練ですが、以降のフェーズでは雪中行軍のような強いストレスが係る環境や、海中に設置された宇宙ステーション様の設備の中で模擬的なミッションを行うことにより自分のリーダーシップやストレス対処能力を自覚するための訓練が行われています。

4. 宇宙飛行士の支援
 このようにして、万全の準備を整えて打ち上げられる宇宙飛行士ですが、実際の滞在中にもストレスを低減するために様々な支援が行われています。主なものとしては、以下があります。
・ 地上とのテレビ電話
ISSと地上の間にはテレビ電話回線が引かれており、宇宙飛行士は家族と(毎週末)、あるいは地上の心理支援要員と(2週間に一度)、定期的に交信を行うことができます。特に家族との交信は、宇宙飛行士の一番の楽しみであると共に、地上の家族にとっても大きな喜びとなっています。

・ 地上からの物品提供
チャンスは限られていますが、シャトルやロシアの宇宙船が飛ぶときには(そのうち日本のHTVという輸送船でも!)、宇宙飛行士に向けて様々な物品が送られます。一人につき一回5kgまでという重量制限はありますが、時には家族から写真や手紙が送られたり、よく食べていたスナック菓子や本、DVDなども届けることができます。また、JAXAでは現在「宇宙日本食」を民間企業の協力を得て開発しており、宇宙でも食べ慣れた日本の味に触れられるようにしています。

・ 地上からのデータ提供
この他に、ISS滞在宇宙飛行士には地上からデータの形でさまざまな情報を提供しています。それは例えば新聞記事やニュース番組であったり、スポーツやエンタメ番組であったり、家族からのビデオレターや子供の運動会の写真だったりします。若田宇宙飛行士が日本発のISS長期滞在宇宙飛行士として、2009年の2月に打ち上げられる予定ですが、現在JAXAでもこれに向けてさまざまな準備を行っています。

 まだ一般には縁遠い宇宙飛行ですが、今は国際協力で足場を作っているところだと言っていいでしょう。現在蓄積されている有人宇宙開発技術は、そう遠くない将来、皆さんがいま海外旅行に行くように気軽に宇宙に行くために必要な鍵とも言えます。日本ではまだ有人宇宙船の開発計画はないですが、いつかくるだろうその日に向けて頑張っていきたいと思っています。
 大学時代は木村先生の下でネズミをいじっていましたが、いつの間にか面白い世界に入り込んでしまいました。今は学生をしている皆さんにも素敵な未来が広がっているはずです。頑張って下さい。

ラベル:講座
posted by wpa2 at 01:57| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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