2009年10月19日

第7回教養講座:高齢期の生き方(要旨)

第7回教養講座 2009年10月3日
『高齢期の生き方』
[1974文 中村誠・早稲田大学心理学会理事]

1.日本がこれから迎える高齢化社会
 厚労省の発表によると、9月15日時点で日本全国の100歳以上の高齡者が4万人を超えた。日本人の女性の平均寿命は86.05歳で24年連続世界一、男子も79.29歳で世界4位(08年)。日本より上位なのは、アイスランド、スイス、香港と比較的人口の少ない国で、日本は男女ペアで実質世界一の長寿国と言える。
   世界の人口は20世紀の100年間に15億から60億へと約4倍、増加した。医療技術の進歩、薬の開発、栄養状態の改善などが、まず乳幼児の死亡率を減らし、次に青年期、さらに高齢期の死亡率を低下させた。2050年には90億を超えることが予想されている。世界の人口はこれからもまだ増え続ける。
 だが日本に限ってみれば、既に06年に人口のピークを迎え、これからは減少に向かう。2050年には1億人規模まで減ることが予想されている。しかしその時、65歳以上が全人口に占める比率、いわゆる高齢化率が40%に達する。一億の日本人の内、65歳以上の年齢層が4千万人を占める。世界の他の国と較べても高率となる。このまま進めば労働力人口も大きく減り、街には高齡者が溢れることになる。

2.老年学研究部会が「事例集」を発行

 早稲田大学心理学会の老年学研究部会の会員が、身近にいらっしゃる「この方の生き方に学びたい」と思う方たちにインタビューをして「高齢期の生き方・事例集」としてまとめ、2008年に発行した。男性12人(73歳〜97歳)、女性8人(65歳〜87歳)の20事例を掲載した。
 メンバーの一人の所正文先生(国士館大学)が、サンプル数は少ないながらも、幾つかの項目に関する回答から、人生観、生活感に関する男女差を比較した。女性の方が日々の小さなことにも目標ややりがいを求め、現実を受け入れ、適応して行く傾向が強かった。
男性は、現役時代の人間関係を退職後も重視する傾向が見られた。

3.ピカソ、熊谷守一、北斎

 画家のピカソ(1881〜1973)は、晩年、南フランスのヴァロリスに移り住み、新たに陶芸
を始め、その工房の主宰者であるラミエ夫人の姪と86歳の時に、二度目の結婚をしている。
 洋画家の熊谷守一(1880〜1977)は、豊島区千早町の自宅からほとんど一歩も出ずに、庭の中で焚火をしたり、草花やアリなどの虫を観察しつつ、晩年まで斬新な絵を描いた。
 葛飾北斎は、日本人の平均寿命が40歳前後の時代に89歳まで生き、71歳のときに代表作の「富嶽三十六景」描いている。85歳で長野の小布施まで旅をし、天井画を描いた。

4.意欲的に生きることの影響

 琉球大・白井准教授と大阪大・磯教授が、岩手、長野、沖縄など8県に住む40〜69歳の男女、約9万人を対象に12年間にわたって調査。「自分の生活を楽しんでいるか」というアンケートをして、意識の高さを「高・中・低」3グループに分け、脳卒中、心臓病などの循環器病との関連を調べたところ、有意に発症率、死亡率の差が見られた。

5.死を受け入れる事

 どんなに長生きをしても結局は死ぬ。最後には誰でも死を受け入れざるを得ない。メンバーの谷口幸一先生(東海大学)は、高知県の疋田善平(ひきたよしひら)医師の「満足死」の考え方を紹介している。本人が納得し、看取る家族も医療する側も満足するような死に方、各人にとっての主体的な死生観が、最後には欠かせないのではないかと思う
 「人は本当は不死である。これを知らないで説明できるものは一つもないのである」数学者・岡潔(1901〜1978)。

[質疑]

質問 日本の多くの男性は、会社や組織のために色々なものを犠牲にして生きてきた。定年になって会社を辞めたからといって、急に生き方を変えろと言われても難しい。

回答 花に水をやる、猫の世話をするなど、身の回りの小さな事でも、自分が自発的にやれることを見つけることが創造的な生き方につながるのだと思う。

ラベル:講座
posted by wpa2 at 00:51| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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