2010年08月11日

第9回教養講座:会社でこんなに役立つ心理学(要旨)

9回教養講座 2010522

会社でこんなに役立つ心理学

笠原かほる

 

私の勤務しているピジョン株式会社は、ベビー、マタニティ、高齢者向けの商品サービスを提供しています。メーカー勤務を通じて、大学で学んだ心理学が、会社でどのように活用できたかをご紹介したいと思います。

 

1.     メーカーの仕事の流れと心理学の活用

(ア)  基礎研究

 基礎研究では、製品仕様のベースとなる知見を蓄積する。当社の主な研究テーマは、身体発達に関することのほかに、皮膚や原材料、生産に関わることがある。ここでは身体発達に関する研究について、述べる。

 これらの業務では、大学で学んだことがそのまま使用できる。具体的には、乳幼児の発達、実験計画・統計、観察、動作解析、質問紙法などである。

 

(イ)  商品開発

 開発過程は、作ろうとする製品の妥当性の検証、修正が課題である。よって、アイディアや使用感の評価が中心となる。ここで活用されるのは、質問紙法と観察法。解析方法としては、多変量解析(SD法やコンジョイント分析など)を利用することが多い。

 

(ウ)  マーケティング

 マーケティングとは、「いつ」「誰に」「何を」「どこで」「どのように」提供すれば、「顧客満足」を得ることができるかという「仕組み」のことである。そのために、環境を分析して、狙い目を発見し、そこに効果的に到達させる方法を考える。

 心理学は「人の行動を科学的に捉えること」なので、すべての場面で応用可能であるが、主にリサーチの場面で実効性が高い。

 マーケティング・リサーチは、アンケート調査がもっとも多く、それに関連して種々の多変量解析が行われる。これによって、顧客を分類したり、顧客が重要と考えていることの重み付けを行ったりする。観察も非常に大切な技法である。

 

(エ)  店舗、店頭づくり

 お客さまの実際の購買は店頭で行われるので、売り場作りは大変重要な事項である。しかし、売り場作りの主役は、メーカーではなく、小売業者なので、ここで重要なのは、その小売業の特長と、お客さまを繋ぐ仕掛けを作ることである。

 どんなお客さまがどんな気持ちで売り場に足を運ぶかに合わせて、品揃えや並べ方を工夫し、的確なメッセージを掲げる。そのために商圏、POSデータの分析、価格や店頭コピーの反応分析などを行う。技法とすると多変量解析が多い。

 

2.     組織マネジメントと経営戦略

(ア)  組織マネジメント

 組織マネジメントの課題は、「いかにして人を通じて、仕事を成し遂げるか」ということ。すなわち、どう分業して、その間をどう調整するか、ということである。「動機付け」や「性格特性」などの心理学的知識が理解に役立つ。

 昨今では、抑うつ症状を呈する社員が多いため、臨床心理学の知識も参考になることが多い。

 

(イ)  経営戦略

 経営戦略は、@何を誰に売るか A売るために、自分はどんなことをするか Bその仕事のために、どんな能力と特性を持つか Cそれを展開する個別の方法は何か ということで構成される(伊丹敬之 『経営戦略の論理』 2004)。

 心理学からはだいぶ距離がある印象だが、最小単位はマーケティング戦略と重なるところが多い。それらを長期の時間軸の中で、効果的な組合せに取捨選択して、実現のための資源を獲得することなので、まったく繋がりがないとは言えない。

 

企業活動と、大学で学ぶ心理学とは大きな溝があると感じられるかもしれません。けれども、世の中は、人の行動の集積でできています。ですから、企業活動の中で、人の動きを理解したいと思ったり、成功・失敗に基づいて、よりよい結果を生みたいと思ったときに、心理学は非常に親和性が高いと思います。なぜなら、心理学は、「人の行動科学的に捉える方法」だからです。今、学んでいることはきっと会社に入っても役に立つと思います。

一方、心理学を学んで専門性があると思うことが、違う世界に入るときの足かせになる可能性があります。経営用語に「コア・コンピタンス」という考えがありますが、これを私自身に当てはめた時、「行動科学」がコア・コンピタンスと定義できました。そう定義することで、自分の連続性を保ちつつ、新しいことにも取り組めるようになりました。やってみれば、常に発見があり、視座が高まる実感もあります。

学生の皆さまが、学んだことに自信をもって、大きく飛躍されることを期待しております。

ラベル:講座
posted by wpa2 at 20:24| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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