2010年11月08日

第10回教養講座:自治体における職場復帰の取り組み(要旨)

第10回教養講座 2010年10月2日(土) 
自治体における職場復帰の取り組み(要旨)
木之下みやま(東京都職員共済組合)

 近年地方自治体において、精神障害を原因とした長期病休者が増加している。東京都知事部局(職員数 約24,000人)においては、平成21年の精神障害を理由とした30日以上の病休者数は357名で、職員千人あたり14.7人となっている。この状況は、社会情勢に加え近年の人員削減や業務の複雑化、行政への風当たりの強さなど、複数の要因が考えられる。上記を踏まえ平成18年度から、精神保健相談員(以下、相談員)が東京都知事部局の事業場内産業保健スタッフとして配置された。現在各局に2〜3名配置されたこの相談員が、様々な職種・多様な形態で勤務する職員の状況を把握し、実態に即した助言や支援を行っている。本講座ではこの相談員の活動について紹介した。
 相談員は実態の把握・予防的対策を目的とした一次予防、不調の早期発見・早期対応を目的とした二次予防、不調者の職場復帰支援及び再発予防を目的とした三次予防のそれぞれの領域で活動している。

1)一次予防に関する活動:一次予防としては、職員のメンタルヘルスに関する啓発を目的とした講習会の企画・運営(年間4〜9回)や、各局や事業所におけるメンタルヘルス研修会(年間約180回)、職場のメンタルヘルス向上のための会議等への出席も含めた職場の安全衛生担当者との会合(年間約500〜700件)があげられる。これらに加えて広報誌(月1回)やパンフレットの発行などの啓発活動も活発に行われている。この活動から、二次予防である相談につながる場合も多い。


2)二次予防に関する活動:二次予防の中心は職員の精神保健相談であり、その数は年間1500件を越える。そのうち約2割は、出先機関への訪問面談となっている。また、電話・メールによる相談も受け付けている。相談の対象者は、最近では不調者への対応に苦慮しているといった職場上司らからの相談が全体の約4割を占めている。


3)三次予防に関する活動:三次予防に関する活動は、職場復帰訓練中および復帰後の相談である。東京都知事部局等では、精神疾患による病気休職者を対象に、平成11年より職場復帰訓練制度(以下、復帰訓練)が設けられた。復帰訓練は主治医の了承が得られた利用希望者に対し、休職中に所属職場において行われている。期間は3か月以内で、週2日、2時間程度出席し職場環境に慣れることから始めて、徐々に時間、頻度、業務量を増やし、段階的に負荷を上げて円滑な復職を促す制度で、現在復職者の約8割が利用している。復帰訓練開始前には相談員が職場と本人とともに復帰訓練の準備を整える。また復帰訓練中及び訓練後しばらくの期間は相談員が定期的に本人と面接し現状把握を行うとともに、職場上司や人事担当者とも緊密に連絡を取り合い、協力・連携しながら復職を支援している。復帰訓練中及び復職後の面接は年間700件以上であり、上司等関係者同席での面接も多い。
 この復帰訓練を経て復職した職員は、再休職率が低い傾向が認められている。理由としては、復帰訓練制度そのものの効果とともに、復帰訓練前後の相談員の活動が復職者の孤立を防ぎ、復職を受け入れる職場側の理解を深めた事や、相談員が本人のみならず職場もフォローしながらこの制度を運用しているということが考えられる。
 
 相談員が行っているのは、職場におけるメンタルヘルス関連のコンサルテーション業務であり、いわゆる治療活動には従事していない。しかし、一次・二次・三次予防全ての領域に渡って活動している相談員の元には随時、職員・職場・人事・安全衛生担当者などからの情報が入り、より多角的に職場の状況を把握することが可能である。だからこそ相談員は、医療機関での心理職とは異なる視点で職場全体をコーディネートすることが可能なのである。
 地道な予防活動はすぐに結果が出るものではないが、上記活動を含む職場内外の様々な活動が少しずつ実を結び、すべての労働者が安心して仕事ができる環境が整っていくことを願っている。

ラベル:講座
posted by wpa2 at 21:48| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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