2006年11月14日

伝言ボード(2006年11月14日以降)

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ラベル:伝言ボード
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「昆虫−驚異の微小脳」水波誠著 (中公新書)2006年8月25日発行。

昆虫は動物の中で最も種類が多く、全ての動物種の3分の2を占める。人間などの哺乳類とともに進化の頂点を究めた生物と言える。また顕花植物との助け合い(共進化)により、豊かな自然の生態系を築き上げてきた。

その進化を支えてきたのが昆虫の小さな脳である。しかし昆虫の身体は外骨格によって支えられ、その制約のため狭いスペースしか占められない。その脳もほんの一立方ミリメートルにも満たない。ニューロンの数もせいぜい100万ほどで私達人間の脳の1000億と比べると10万分の一しかない。

著者は昆虫の脳を「微小脳」と名付け、私達哺乳類などの「巨大脳」と比較してどんな特徴を持っているか研究している。

微小脳では、末梢の感覚ニューロンで選択した情報だけを脳に伝える。こうして素早く、必要な情報を得られる。またキノコ体のように複合的なニューロンの働きで記憶を蓄えたりすることもあるが、多くは単一のニューロンが情報処理の単位となっている。こうして昆虫は簡潔で適切な機能を発揮して、自然に適応し、その環境を発展させてきた。

それに対して私達人間は、大脳を発達させ、言語を用い、道具を発明し、文化、芸術、学問を生みだしてきた。しかしその結果、地球環境を大きく悪化させてしまった。最近の新聞の記事でも、昆虫から学んだ知識を兵器や戦争のために利用しようとしている。人間が昆虫より賢いなどとはとても言えない。

イスラエルで「ハチ兵器」開発中。
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/world/K2006111704010.html?C=S
イスラエル軍が、敵を効果的に攻撃するために、ナノテク技術を利用して、「人造スズメバチ」を作る研究をしていると、現地の新聞が報じた。

米研究所、蜜蜂を訓練して爆弾探知。
http://www.asahi.com/science/news/TKY200611290258.html
蜜蜂を訓練して、爆弾の匂いを嗅ぐと口吻を伸ばすように仕向け、爆弾探知機として使えるようにしたとアメリカのロスアラモス研究所が発表した。

2006.12.2.(土) 中村誠。
Posted by 中村誠 at 2006年12月03日 15:20
「胎児の世界」三木成夫著(中公新書691)
1983年5月25日初版、2004年2月15日21版。

三木成夫(1925〜1987)は解剖学者、比較形態学者。東京芸大教授として美術専攻の学生達に、胎児の顔写真をスライドで見せ、子宮の中の音を聴かせ、「胎児の世界」を講じていた。

鶏の卵は21日で孵化する。若き日の三木は動物商が届けてくれる受精卵の血管に墨汁を注入し、時期毎にフォルマリン標本を作り、その発生の過程を観察した。その4日目から5日目にかけて明らかに胚は鶏の顔になっていた。そして脾臓が腸管から独立した臓器になっているのが認められた。それは古生代の終わりに一億年をかけて脊椎動物が海から陸に上がった進化の痕跡を物語るものだった。

鶏の小さな卵の中に脊椎動物の悠久の歴史が秘められている。「では人間の場合はどうなのか?」。人間の胎児の標本を作ること。胎児じたいは幸か不幸か中絶の手術の時に手に入る。その胎児の心臓に鶏卵と同じく墨を注ぎ込まなくてはならない。だが三木自身は夫人の妊娠を機に自分でやる意欲を失う。研究室の他のメンバーの手によって標本は作られていった。

その三木に芸大当局は「性を組み込んだ保健の講義」をして欲しいと要請する。彼は母胎の奥のドラマを学生と共に直視することをを決意する。だが胎児はその顔を胸に埋めていて表情が見えない。三木は胎児の標本の首を切り落とし、表情を写真に撮った。受胎32日目、33日目、・・・・・。魚の顔、爬虫類の顔、哺乳類の顔、やはり人間の胎児の表情にも、進化の面影が反映されていた。ここにも"まぼろしの上陸劇"の再現があった。

最初の生命物質は30億年むかしの海水に生まれたという。それはみずからの界面を通して、周囲から一定の物質を吸収し、それを素材として体を構成し、さらに壊しては環境に戻して行く。吸収と排泄の営みにより、自己更新をおこなう新奇な存在として出現した。地球という特殊な「水惑星」においてのみ現れ出た。地上の全ての生物は、遡れば「母なる地球」に繋がる「星の胎児」と言える。

植物の体は、動物の腸管を引き抜いて裏返しにしたものだ。葉と根は大気と大地に直接触れ、完全に交流しあう。それに対し、動物の体は宇宙の一部を切り取り、おのれの中に閉じ込める。必要な物質を体内に導き、腸管から吸収する。自力栄養の出来ない動物は獲物を捕らえるため、感覚-運動系の組織を発達させざるを得ず、その中心となる臓器が脳であった。

2006.12.31.(日) 中村誠。
Posted by 中村誠 at 2007年01月01日 00:25
「『金縛り』の謎を解く 夢魔・幽体離脱・宇宙人による誘拐」
福田一彦著 PHPサイエンスワールド新書076 880円(税別)
2014年2月3日 第1版 第1版 発行

私(評者)は20歳代の初めごろから、しばしば不思議な夢を見た。
たとえば夜10時ごろ自室の畳の上に布団を敷いて仰向けに
寝て、すぐに眠りに落ちる。すると20〜30分経ったころ、突如、
身体の中をものすごい嵐が吹き抜けるような感じがして、半分、
目が覚める。嵐は身体の表面を通り過ぎるのではなく、身体の中
を吹き抜ける。身体が布団の上に1メートルぐらい浮かんでいる。

「なんだこれは」と驚き、身体がバラバラにならないように、腹の
前で両手の指をしっかり組んで嵐の吹き過ぎるのをじっと待つ。
するとしばらくして身体がすーっと布団の上に降りて、そこで
初めて本当に目が覚める。はっきり意識が覚醒した後でも、体中
の皮膚の内側が粟立つような感覚がはっきり残っている。

一週間ぐらい毎晩続けて見たこともある。だんだん慣れてきて、
「あっ、またあの夢が始まった」と夢の中で自覚も出来るようにな
った。高さもはじめは1メートルか2メートルだったが、高いとき
には天井の羽目板がすぐ目の前に見えることもあった。そのあいだ
身体は思うように動かないが、眼だけは周囲を眺めることが出来て
タンスや本棚も視界の隅で見ることができた。

空中で横に一回転して、また布団の上に戻ったこともある。布団の
上に残された肉体と空中に上った意識とを結ぶ紐のようなもの
があるとしたら、それが絡まったり、捩(ね)じれてしまったりした
のではないかと心配したが、別にそんなこともないようだった。

京大で心理学を専攻していた友人が東京に出て来て、拙宅に泊まり
に来たときにも、そのような夢を見たことがある。目を覚ますと、
隣に彼がまだ起きていたので、「おい、今の見た? 空中に浮かんで
いたんだよ!」と声をかけたが、彼は「何も見えなかった」と答えた。

自分では不思議な体験だと思い、それを説明する記述は無いかと
探すと、カール・ヤスパースの「精神病理学総論」(上巻P.264 
1969.第13刷 岩波書店)に「振顫譫妄(しんせんせんもう)」とい
う言葉を見付け、目が覚めた後も体中の皮膚の内側が粟立つような
感覚がハッキリ残っているのを表わすにはぴったりだと思った。

そのころ事業が上手く行かず、ウツ状態になっていた父が治療に
通っていたお茶の水の順天堂大学病院の精神科のM医師にそう
言うと、「そんなのはアル中が大分進んだときに出る症状だよ」
と一笑に付された。「でも念のために脳波を撮ってみようか」と
病院の近くの脳波専門のクリニックで脳波を撮影してもらった
が、「別に問題ありません。キレイな脳波をしていますよ」と言わ
れ、安心したような、ガッカリしたような気がした。

その後も何十回と同じような夢を見たが、次第に症状も穏やかに
なり、頻度も減り、30歳を過ぎるころからあまり見なくなった。

だが本書によると、わが謎の神秘体験も一種の睡眠麻痺らしい。
実験室で再現させることも出来るらしい。「仰向け」に寝ると起
こりやすいという点も符合する。

1953年、シカゴ大学のアスリンスキーとクライトマンにより
睡眠中に覚醒しているときと同じような眼球の素早い動きが
観察され、このとき被験者は夢を見ていることが多いと報告
された。この睡眠の状態がレム睡眠と名付けられた。

ふつうは眠りについて、しばらくしてからレム睡眠が現れるが、
眠ってすぐにレム睡眠が現れる場合がある。これを「入眠時レム
睡眠」と呼ぶ。このときに金縛り体験などの睡眠麻痺を起こすの
だと著者は言う。

実際に何人かの被験者を呼び、入眠時レム睡眠を起こさせた。
ただし入眠時レム睡眠じたいは比較的、簡単に起こさせること
ができるが、その都度、金縛り体験をするわけではない。頻度は
むしろ少ない。

その貴重な金縛り体験を起したときの被験者の脳波を調べて
みると、通常は覚醒時にしか現れないはずのα波が大量に出て
いるのが観察された。その出現する脳の部位も覚醒時とたいへん
似ている。

そのため金縛りの体験者たちは夢を見ているのに、それを夢とは
思わずに実際の体験だと思い込んでしまう。真っ暗な実験室に
いるにも関わらず、金縛り体験の最中に部屋の中の様子をはっき
りと「見た」と主張するのだと言う。

また「体外離脱」体験を誘発する脳の部位というのがあるらしい。
2002年にブランクらが発表した論文によると、「角回(かくかい)」
という脳の部位を刺激された患者が「体外離脱」体験を報告した
という(P.97)。

ここは「夢体験」を生じさせるときに活発化する脳の部位とも近く、
金縛り体験の最中に、「体外離脱」体験を起こさせる生理的な背景に
なっているのではないかと考えられる。

1970年代にこの本を読めたら、評者もずいぶん安心できたろうに。

(中村誠 1974年 一文卒)

Posted by at 2014年04月17日 04:13
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