2013年01月31日

第13回教養講座:なぜ構造構成主義は復興支援活動に役立ったのか?(要旨)

第13回教養講座:「なぜ構造構成主義は復興支援活動に役立ったのか?
−ふんばろう東日本支援プロジェクトの活動を通して−
 西條剛央(早稲田大学大学院商学研究科MBA専任講師)
2012年 5月19日

1.構造構成主義とは何か
総合領域としての人間科学が、異なる領域のあいだの不毛な信念対立を解消し、建設的なコラボレーションを生み出すため「原理」(メタ理論)として考え出されたのが、構造構成主義です。これは新しいICチップみたいなもので、いろいろな学問領域に組み込んで役立てることが出来ます。2005年に「構造構成主義とは何か 次世代人間科学の原理」(北大路書房)を上梓しました。「現代のエスプリ」に特集されたり、毎号テーマを決めて「構造構成主義研究」という冊子を出したりしています。震災前までは「そこそこ学問の世界に広がっていけばいいな。あまり有名になり過ぎると面倒くさい」ぐらいに思っていました。

2.ふんばろう東日本支援プロジェクトとは?
それが震災の現場に行ってみて、被害もすごいんですけども、システム上の問題で物資が届かないとか、届いても公平主義で数が合わないと配らないというのを目の当たりにし、震災をキッカケに日本の社会が抱えていた不合理が一気に表れてきたと痛感しました。そこでツイッター、ホームページ、フェイスブックを利用して活動をはじめ、3千カ所以上に物資を届けたり、アマゾンから3万個以上の物を送ったり、行政が集めたまま配られていない物資を10tトラックで40台分くらい運んだり、家電を2万5千世帯以上に送ったりしました。

3.方法とは何か
ここで紹介したいのは「方法の原理」ということです。方法というのは@特定の状況で、A特定の目的を達成するための手段なんです。そのことに例外はない。例外がないということは原理的なことです。であれば絶対的な正しい方法がどこかに転がっているわけではなくて、その都度、@状況に応じ、A目的を達成するために有効な方法を見つけるか、作れば良い。

4.正しさから有効性へのシフトチェンジ
「正しい」と言ったとき、その中には暗黙裡に絶対性が折り込まれています。「あなたは間違っている」と言われると、本当はそうだとしても、心が傷ついてしまい、認めがたい。そうではなくて「方法の有効性」の方にシフトすれば議論もスムーズに進めやすくなる。現在は変化のスピードが速い時代なので前例を踏襲していては満足に機能しない。その都度新しい方法を見つけることが有効です。個々の知識以上に方法の使い方の知識が大切になります。

5.信念対立
関心が強いと信念対立が起きやすい。微細な差に敏感になり、ちょっとした違いが許せなくなる。組織というのは「心」を持った人間の集まりなので、話しても余計ケンカになってしまうこともあります。「話せば分かる」とは限らない。合わない人とは付き合わないというのも一つの知恵ですが、チームで何かをするとなると、そうも言っていられません。
ボランティアというのは誰でも「自分は正しいことをやっている」と思っているので、相手と対立すると、「自分は正しい、だから相手が間違っている」と思ってしまいがちです。

6.関心相関性と契機相関性
「水溜まり」もふつうは邪魔なだけだが、砂漠では大切なものになります。様々な存在・意味・価値は、身体・欲望・目的・関心に応じて規定されます。存在と認識は切り離せないものです。自分が「当り前だ」と考えていることも他の人から見たら、当たり前ではないのです。
自分の関心は体験(契機)から自然に形作られるので盲点になりやすい。さらに関心に応じて価値が表れるのでいっそう見えにくくなります。@体験(契機)→A関心→B価値といった順に作られるので、B価値判断で対立した場合、→A関心→@体験(契機)と遡る思考法がないと、信念対立から抜け出せなくなります。自分の価値判断の元になった体験や関心を忘れがちになります。

7.感謝することの大切さ
ボランティア活動を一年間やって来て、「感謝すること」の大きさを痛感しています。感謝の反対は何かというと「当たり前」なんですね。感謝というのは自分も相手も同時に肯定することです。生命は肯定されたがっている。一生懸命やっているのに否定されると傷つく。傷つけられた悲しみが、怒りとして表わされる。まず相手を肯定することからスタートする。
自他の関心のズレを自覚し、相互に了解可能なメタ関心(共通目的)を共有する。共通目的に照らし、どちらの関心が妥当か問い合う。こういう考え方はテーマを問わず、いろいろな分野で役に立てることが出来ると思います。

 
ラベル:講座要旨 講座
posted by wpa2 at 23:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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